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海外駐在員の目から見た日本とイギリス


by Mikihiko_Makita
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cool but crazy...

人里離れた公道脇に立ち並ぶ、飲料の自動販売機。
新車購入の際にはすでに標準搭載となった、カーナビ。
トイレの便座からは、ご丁寧にも温水が噴出す。

世界に冠たる日本の先端技術が、便利・安全・効率的な生活環境の実現に貢献している反面、時に行過ぎとも言えるサービスを消費者に提供するのは周知の事実だ。僕たち日本人は日々当たり前のようにそれらの恩恵を受け、自分たちの欲望を満たしてくれそうな、更なる技術の進歩に期待する。技術者たちは、その期待に応えるべく更に志を高くして、新しい技術の製品化を目指す。

勿論、今までそういった日本独特とも言えるサービスの恩恵を大の字で受けてきた僕には、それを否定する資格は全く無いし、事実、こうした技術のお陰で助けられた場面も多々ある。

しかし、海外生活を経験すると、こうしたサービスは実生活の中で

「無くても何とかなるもん」

であること痛感するのだ。


先ほど挙げた例に言及しよう。

イギリス(と言っても日本以外はどこもそうだろうが)の街中で自動販売機を目にすることはまず無い。たまに、駅や空港やオフィス内で見かけるが、そのほとんどが"OUT OF ORDER(修理中)"か、よしんば動いていても釣銭が出てこなかったり、全く冷えていなかったりと散々である。しかし、少し我慢して近くのスーパーやコンビニまで歩いて購入出来ることを考えれば、「自動で販売している」そのサービス自体、イギリス人にはあまり関心が無いのだ。

次にカーナビ。イギリス(特にロンドン)は道が複雑ですぐ迷うのに、不思議なことにイギリスに来てからカーナビを搭載している車を見たことが無い。存在するのだろうが、カーナビを制御する衛星システム自体があまり普及していないのだろう。今までの経験から言って、北欧系の国はこうしたソフト技術にうるさく普及率は高いようだが、車のディーラーを覗いてもカーナビの「カ」の字も目撃しないのだ。「地図を見ればいいじゃん」-イギリス人たちの声が聞こえてきそうである。

ウォッシュレットは、欧米人に言わせると「?」なアイテムの最上位にランクされること間違いなし。以前こちらの本屋で、日本へ行く旅行者向けの英語のガイドブックを立ち読みしたのだが、ウォッシュレットの使用方法が写真付きで解説されていたのを見て、思わず吹き出してしまった。日本でウォッシュレット愛好家だった僕は、これが存在しない生活を強いられた数ヶ月間ははっきり言って辛かった。しかし今となっては実生活に全く問題が無いし、逆に日本に一時帰国している時に久しぶりにウォッシュレットを使用すると、肉体的にも精神的にも何だかヒドクくすぐったいのだ。

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今回の一時帰国中、一人で山手線に乗る機会があった。

自動券売機の前で、乗車券を購入するのに明らかに四苦八苦している白人男性がいた。頭上の地図を眺めながら、「自分のいる駅は渋谷」ということは理解っているのだろうが、「行き先がどれで一体いくら掛かるのか」全く理解していない感じ。駅員に声を掛けて聞く様子も無く、東京砂漠の真ん中で立ちすくんでいる。


声を掛けてあげることにした。(別に急いでないし)


聞けば、何とイギリスから来た旅行者で、今から秋葉原に行ってワイヤレスマウス(笑)を購入するのだと言う。そこで、切符の買い方を説明したのだが、その間、券売機のタッチパネルの精度やレスポンスの速さに驚いていた彼は、終始 "Cool..." を連発していた。

最後に、画面に表示された金額を支払おうと硬貨を一枚ずつ確かめながら入れる彼に、僕はこう言った。

You can insert your coins at once.
(お金は一度に挿入口に入れられるよ)

一瞬、困惑した彼が発した言葉は、たった一言だがなかなか的を得たものだった。

・・・・・ Crazyだね


「やり過ぎだぞ、日本」
- そんな皮肉な意味合いが彼の言葉に含まれていたのかは定かではない。
by mikihiko_makita | 2006-11-09 09:50